学級経営のねらい
(1 ) 日常生活の自立と健康のために
衣服の着脱、洗面、手洗い、排泄、食事、清潔などの基本的生活習慣については、習慣化し、場所が変わってもできることが大切です。また、挨拶、言葉遣い、きまりを守ることなどの集団生活に必要なマナーの確立も大切です。子供自身が、日々の生活に自分の力を出し切って取り組むような目標や手立てを設定し、それに毎日取り組むことで、子供自身の力で生活できる部分が日に日に大きくなり、子供の生活は、より自立的になり、より発展的になります。 また健やかな体は、生活の基礎であり、体力の向上、体重のコントロールも学年が上がるに伴って大切な課題となってきます。放課後の生活で汗を流して活動することがどうしても少なくなってしまう子供が多いため、登下校の習慣、休み時間の過ごし方だけにとどまらず、食生活の管理など総合的な生活習慣のコーディネートが必要です。 また、体育技能の向上を図り、日常的に身体を動かす週間を付けることを目指して、週2時間の体育の時間以外に、火曜日・金曜日の1時間目の広範に「朝体育」の時間を設定しました。「縄跳び(短縄・長縄)」「体操」など繰り返し学習しながら、達成する喜びや生涯にわたって身体を動かすことが楽しいと感じられる子供の育成を目指しています。生活の流れに沿って、実際的な状況の中で繰り返し指導しながら、望ましい生活習慣の形成を図ります。学校と家庭が連携して、子供がよりよく日常生活に取り組めるように生活を整え、必要な支援を行うことで、基本的な生活習慣を身に付けることができます。 子供が1日の生活に見通しをもって、その時々の日常生活の様々な活動を自力で処理できるようになることは、単に身辺生活の処理にかかわる技能を高めることにとどまらず、日常生活をより自立的・発展的に行うための生活意欲や生活態度を育てることにもつながります。それはすなわち、子供が自分の力を最大限発揮できることにつながると考えています。
(2 )人とのかかわりを楽しむために
わかば学級は、児童数24人と少人数ですが、個と個が集まった集団であること、学校の中の1つの学級である特徴を生かした学級経営を基本にしています。学級の中でも集団で遊ぶ楽しさやルールを守ることの大切さを学校生活のさまざまな場面で体験するようにしています。
例えば、学級の中での小さな「いさかい」も大きな成長のためのかかわりの一つと考えています。各々の価値観を擦り合わせる大切な中間ポイントだと考えているからです。学級の中での「いさかい」はとても貴重なチャンスです。各々の価値観の中で、互いに落としどころを探るまで、一定の範囲の中で見守ったり、必要最小限の仲介をしたりするに留めます。これらの取り組みが、次の「人とのかかわり」を楽しめることにつながると考えています。
学校の一員として全校朝会や学校行事に参加する場面もあります。活動の特性に応じて、わかば学級として参加する場合(学習発表会・消防写生会等)もあれば、当該学年の一員として参加する場合(運動会・全校朝会等)もあります。当該学年の一員として参加する場合は、原則として学年の中の1つの学級を交流の学級として定めることで、かかわりの積み重ねが生じるようにしています。
また、交流の学級では、学年での学習(社会科見学・生活科の地域巡り等)やお楽しみ会等でも一緒に学習したり活動したりしています。全校朝会や体育朝会、音楽朝会では、交流の学級の列に並んで参加しています。毎週木曜日には、交流の学級で給食を食べています。
他校の特別支援学級との合同行事でも、事前に自己紹介新聞を交換し合ったり、自分と同じ学年の友達を覚えたり、手紙を書いたりすることで、年2~3回のかかわりがその日だけのかかわりに留まることのないように工夫しています。
(3 )自分でやろうとする気持ちを育てるために
わかば学級の子供たちの多くは、入学前の生活の中で、どうしても「やってもらう」「やらされる」ことの多い生活を送ってきています。これは、「なるべく早くできるようにさせたい」という願いから考えると当然のことです。しかし6・7歳~11・12歳を迎える小学校の6年間を考えると、日常生活の自立と同じように、自分でやりたいという意欲をもつことが大切な時期と言えます。そのために、自己選択・自己決定の場面を意図的に設定しています。発達段階や学習の目標、教材の難易度に関連しない場面であれば、学習課題を1つだけでなく複数用意し、選択できるようにしています。このような取り組みから「自分で考える」「自分でやる」気持ちを高めていきます。
毎週月曜日・木曜日・土曜日の1時間目の後半には、「朝読書」の時間を設けました。生活の合間のちょっとした時間に、学校図書館・学級文庫から選んだ本を読んでいます。本に親しむことが大きなねらいの活動ですが、時間を設定し、必要最小限菜支援だけを行うことで、子供たちは、自分で自分の詠みたい本を選ぶことができるようになります。
また、学級の中に新たな課題が発生した場合も、最初は子供の様子を見守ったり、小さなヒントを与えたりすることで、自分で課題を解決していこうとする態度を育てます。
これらのことは生涯学習の視点からも大切だと考えています。自らの意欲が次の自分の課題を発見し、そのことに自律的に取り組んでいく態度につながる基盤を作りたいと考えています。
(4 )「もっとやってみたい」という意欲のために
学校生活の多くの時間が授業時間です。登校してから学校で過ごす時間(6時間授業日)は、6時間35分(8時10分~14時45分)で、授業時間は4時間(45分×5時間+15分=240分)になります。およそ3分の2が授業時間です。わかば学級では、この時間以外にも、日常生活上の学習課題や休み時間の過ごし方についても目標を設定しますから、ほとんど全ての時間が学習の時間です。
「自分の課題を意識する」→「課題に向かって努力する」→「わかった」「できた」→「友達にスゴイって言われた」「保護者や教師に誉められた」→「もっと上手にできる友達がいるぞ」「ちょっと難しそうだけどやってみようかな」というルーチンの中で、「わかる楽しさ」「できる喜び」を味わうことはとても重要です。一人一人がその思いをもつことができるような取り組みを、授業時間はもちろん、学校の教育活動全体の中で行うことで、「もっとやってみたい」という意欲につながると考えています。叱る時は簡潔に一度だけ、一度できたことはその時誉め、区切りの時にも誉め、次の時間も誉めることを心がけています。
また 一人一人の個性を認め、集団の中で一人一人が活躍できる場面を設定することも心がけています。「努力していることに価値がある」ということが学級の風土となるように努めていきます。
(5 )一人一人の成長を確実にするために 子供たち一人一人が安全で楽しい学校生活が送れるように配慮し、それぞれの発達段階に合わせて指導にあたります。一人一人の課題に応じて、保護者、学級医や専門機関と連携して個別の教育支援計画及び個別指導計画を作成し、学習活動の基盤として活用しています。
そして、子供たちが放課後に利用している児童館、学童クラブ、療育施設、医療施設、学習機関とも、直接的に或いは保護者を通して間接的に、それぞれの役割を確認しながら、子供たちに必要な連携した支援を考えていく努力をします。
また、授業場面における工夫として、幾つか心がけていることがあります。複数指導者制がわかば学級の特性ですが、「子供たちが主指導者に注視できる環境を保持する」「主指導者の指示をそれ以外の教職員が安易に繰り返さない」ということを常に意識しています。授業の開始時刻や終了時刻を教師自身が守ることも大切で、このことが、次の活動に必要な時間を保証することにつながり、子供たちが安心して授業に参加できるようになります。子供たち自身にも、時間を守ることや、やらなくてはいけないことは素早く短時間で行うことを求めています。この場合にも、「周りから遅れないようにするための支援」よりも「周りから遅れていることに気付ける支援」を心がけ、子供自身が修正していこうとする気持ちを育てます。
さらに、授業規律についても、「授業の始めと終わりの挨拶を全員が姿勢を正しくして行う」「指名されたら、返事をしてから答える」「挙手して指名されてから答える場と、各々が口々に答えてよい場の区別をする」というルールを徹底しています。
そして、子供たちに提示した目標が、的確に子供たちに伝わり、子供たちが見通しをもって適切に活動しているかということを、常に子供の姿で評価し、授業を進めていくことを大切にしています。これは、45分の中で1回だけ行うのではありません。授業を構成している細かい活動一つ一つについて、「子供に伝えたら、そのことができているか評価する」という繰り返しで授業が成立しているという考え方に基づいて、可能な限り細かいターンでの指導と評価の一体化を目指します。
また「活動についての説明の後には質問の時間を設ける」ことや「授業の最後に、代表の児童1名が学習のまとめの発表をする」ことを通して、子供たちが見通しをもって活動に取り組むことも大切にしています。
これらのこと一つ一つが、子供たちの成長を確実にするための大切な営みだと考えています。
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